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大腸憩室症 ②大腸憩室炎

大腸憩室症は食生活の欧米化や高齢化により今後、ますます注目が高まる疾患です。僕は日本初の大腸憩室のガイドラインの作成メンバーでもあります。

前回は憩室出血について説明しました。今回は憩室炎についてです。

 

大腸憩室炎とは、便秘や細菌感染などの刺激によって憩室に炎症が起きたり、最悪、穿孔(憩室が破れる)して便がおなかのなかに広がってしまう病態です。欧米では増加傾向です。日本では、現在の所は、はっきりとした統計はありませんが、憩室そのものが増えていることから、今後も確実に増加が予想されています。消化器外科の臨床の肌感覚としても、手術となる憩室炎が年々増えてきている印象があります。

60歳以下では主に右側(盲腸、上行結腸)の憩室炎が多く、虫垂炎との鑑別が必要になります。60歳以上では反対にS状結腸憩室炎(左側)の方が多く、重症化しやすい傾向にあります。

ちなみに、欧米では右側の憩室の発生と憩室炎は非常に稀です。日本の腹部救急の実臨床では、右下腹部痛といったら、A:虫垂炎⇒手術適応の判断か、B:憩室炎⇒保存的治療(絶食、点滴、抗生物質)というのが研修医で一番最初に学ぶ鑑別診断です。これに対して欧米の右下腹部痛の鑑別診断の選択肢に、発生頻度からそもそも憩室炎は存在していません。

 

 

提示した2枚のCT画像は両方ともS状結腸憩室炎の症例です。上の症例のCTはS状結腸が炎症をおこして大きく浮腫んでいます。下の症例のCTは大きな膿瘍をつくっている状態です。両方の症例とも保存的治療(食止め、点滴、抗生物質)では改善しませんでしたので、腹腔鏡S状結腸切除術を施行し治療しました。

 

 

憩室炎の危険因子(リスク)は肥満と喫煙がはっきりとしており、重篤化すると約3%の死亡率となります。憩室炎の半数以上は保存的治療(絶食、点滴、抗生物質)で治りますが、穿孔(腸が破れている場合)、狭窄(大腸カメラ(大腸内視鏡)が通らない)、何度も繰り返す憩室炎で生活に支障がある、炎症を繰り返し他臓器との瘻孔をつくる(S状結腸膀胱瘻:膀胱とS状結腸がつながって尿から便が出る)、などの場合は手術が必要となります。

穿孔している場合は、救命のために速やかな開腹手術を施行しますが、S状結腸膀胱瘻など、待機的な手術が可能となる場合は、腹腔鏡手術の有効性が報告されています。というか、たくさん僕が報告してきました。(S状結腸膀胱瘻に対する腹腔鏡手術はニッチな分野ですが、別項で熱く語ります。語らせたら、間違いなく日本一です、いや世界最多の症例数ですので世界一です!)

 

便潜血、大腸憩室、大腸がん、その他、大腸の疾患は『せたがや内科・消化器クリニック』までお気軽にどうぞ

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